あおば百景

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古き社と向き合うモダンな学園

 青少年センターを抱く丘陵に続く台地の森にモダンな学校建築群が見える。桐陰学園である。昭和39年4月にまず高校が開校し、中学校、小学校、幼稚園と整備され、次に女子部の中学・高校ができ、平成5年には大学法学部も開設された総合的な学園である。大学は市民講座として開放され、また有名な建築家丹下健三氏の設計した記念講堂は、森の丘の建物として際立ち、谷本川べり散策の風物詩でもある。

 桐陰学園の敷地には多くの桜が植えられて、開花の頃に学園及び周囲を巡って楽しめるが、ここが広域避難場所と知っていても、縄文期の遺跡のあったことを知る人は少ない。

 もともとは、当地は鉄(くろがね)神社の鎮まる聖なる丘陵地であった。今は桐陰学園へのバス道となっても両側に高麗獅子が残り、希典筆と刻む「日露戦役記念碑」もあるのて、参道であったと気づく。坂の参道を真っ直ぐ登ると、鳥居が建つ所より今の鉄神社の境内に入る。

 境内にはサクラ、モミ、アカガシ、クスノキと名木古木指定の樹木が多く、歴史を感じる。社の由縁には、武蔵風土記では青木明神、杉山明神を合祀して鉄三村の鎮守になり、明治になって鉄神社に改称したと記されている。もとは田舎の茅葺き民家風の社殿と右に神楽殿があったが、昭和38年に今の本殿とその右の鐵古典獅子奉安所ができたようだ。ここの獅子はその頭や舞の形態から高麗のものと思われるが、埼玉県や多摩の稲城のものと同じと記す。三体の獅子頭は雌雄共に角があり、金色と黒漆塗りがあり、頭上に宝珠を頂くものもあるといふ。鉄と言う地名との連想で大陸との繋がりを思うのも楽しい。

(山本 文義)