地区一覧(C) あおば百景を探る会 |
開発で消えた都筑郡衙跡・荏田猿田公園東急田園都市線江田駅で下車し、国道246号線を渡り右に沿って最初の道を左折して東名高速道の下を潜ると直ぐ右手に荏田猿田公園がある。三段の斜面になって、一段目には狭い広場に鉄棒とベンチがあり、斜面を利用して滑り台がある。その上の二段目は草の広場となって、三段目の狭い広場にはブランコ、砂場、滑り台がある。三段目は高速道と同じ高さで、車の騒音が聞こえる。巡りや随所に植樹があり、欅が多い。時々ヒヨドリの鳴く声もする落ち着いた公園で、便所も、飲み水もあり、設備も一応揃っていると言える。一番の特色は、公園を含め東名を挟んだ約200メートル四方に、律令時代の武蔵国都筑郡の役所、群衙があったということで、「長者原遺跡」の掲示に書かれ、跡跡の航空写真もついている。 高速道の開通で、遺跡は皆破壊され何も残っていない。今も保存されていれば、古代の都筑郡衙跡として青葉区民の大きな誇りになっていたであろうに、残念なことである。当時は未だ独立した区でなかったので、遺物は都筑区に出来た横浜市歴史博物館の常設館でみるしかない。青葉区制10周年を機に区内の遺跡公園の整備をお願いしたいものだ。 この地が台地の端であったことは荏田猿田公園の道を上ってゆくと良く分かるが、この台地の端に、都筑郡衙があり、郡衙の中には正面に郡庁、左手に正倉(徴収した稲穀等収納)右手に館(役人の宿舎)及び厨の建物が配置されていた。その回りにも掘立柱建物、有石礎式建物、竪穴住居跡もあったようだが、それらについての説明はない。調べてみると、都筑郡衙が建てられる以前の縄文、弥生、古墳時代の遺跡のようだ。 この台地の裾には、今も国道246が通っているが、当時(8世紀後半)も、相模国から武蔵国に至る東海道があったと考えられ、都筑郡衙はその当時の基幹道路に沿って設けられたことを示していると言う。 また、この地に隣接して赤田古墳遺跡群があり、市が尾の方には朝光寺原遺跡、稲荷前古墳群がある。郡司は地方の豪族より任命されたので、これらの古墳群系の首長が選ばれたかも知れないが、その屋敷跡は未だ発見されていない。また近くの真福寺も国府と国分寺のように都筑郡衙とセットかも知れない。この公園で青葉区の古代を幻想しては如何。
(文: 山本 文義, 写真: 山田 剛一)
|