あおば百景

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古木に囲まれる西勝寺

西勝寺

 あだみ野駅東口よりたまプラーザ駅につづく欅並木の道に入る手前、早淵川を渡って直ぐ右手の森に影顕山西勝寺がある。曹同宗の寺が多いこの地区では、珍しく浄土真宗西本願寺派の古刹である。約400年前の創建と言われるが、火事にあい資料が失はれ詳細は不明と言う。その後再建されて、今は本尊の阿弥陀如来を安置する赤屋根の寺である。

 寺には供養に使はれた中世の古い板碑が保存されている。青葉区で最も古い板碑(鎌倉時代1224年)は市指定文化財で鴨志田町の集合墓地にある。板碑は秩父産の緑泥片岩でつくられているが、全国で一番古いのは埼玉県にあり、青葉区のは次いで古いという。

 山門の右に名木古木指定の大きな銀杏があり、左手に日清戦争での唯一の戦没者記念碑がある。本堂の右に和洋折衷の庫裏、左に車庫があり、そこから裏手の竹林の丘に登ると元禄6年と刻む開山の法師を囲む住職の墓が並んでいる。窪んだ下は新しい墓地として開かれ、向かいから左手にかけてマンションが立ち並びのが見え、緑地は寺の一画だけとなった。そのマンション一つを持つ住職は永代料300万円として墓地を売り出している。

 なお、参道に入る右手前の駐車場一隅にある校倉造り風のコンクリート製の建物が奉安殿と知る人は少ない。近くの山内小学校にあったものを占領下でも破棄せず、秘かに残して倉庫に使ったようだ。急行の停まる駅街になった今を思うと、今昔の感に耐えない。

(山本 文義)